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Zebra. (JKキム・ドンウク ) / Pianto

●デビュー当初から今回のようなコンセプトがすでに期待されていたJKキム・ドンウクのジャズ・プロジェクト。なんと、トリオとは伴奏ではなく、彼のvoを含んでpとbとのこと。場末の(…)ジャズ・クラブでは(ドラムだと隣のバーから苦情が来るとかあって)ありうるフォーマットだが、ご覧の通り大スタンダード大会(サミー・デイビスJr.の選曲は渋い!)となっており、おそらくイム・ジェボムも(そしてパク・ヒョシンも)真っ向勝負では歌わないジャンルだけに、男版イ・ソラ(ちょっと違うが)の面目躍如たるところが期待されるところである。

 さて実機テストの結果であるが、若干マイクの定位設計がどういう配置かはナゾなものの(ピアノに寄りかかりながらドンウクが歌っている感じか?)、ベースもピックアップ→アンプなしでも十分な感じでボリュームを上げなくても何をやってるか分かるまともなドラムレス・トリオ録音となっている。つまり歌謡曲の録音流儀ではないので、サウンド品位の点では問題ない。ただ予想されていた通り、JKキム・ドンウクによるスキャット部分というのはほとんどない。またバースで廻す的なピアノ/ベース・ソロも毎曲組み込まれているわけではないので、いわゆるインプロビゼーショナル・ミュージックといえるかどうかは微妙である。しかし、アレンジの妙で聴かせる(実は『ごめん、愛してる』などで韓国でも著名な[05]などはストリングス[実際はシンセ]も入っているのだが)〜つまりオリジナルからの距離感が様々に断続的に変化していく、という部分ではいわゆるラウンジ・ミュージックの範疇を超えており(これだと話に集中できず音楽のほうを聴いてしまうだろう的)、韓国的にはまずは“ジャズ”・アルバムだといってしまって構わないと思われる。極めて不適切な喩えとなってしまうが、“アドリブ部分は後でトランペットでやってしまうので歌はあまりいじらない”状態のチェット・ベイカーのノリに近い(あれほど甘くも高くもなく、ひたすら無骨でハスキーではあるが)といえよう。[07]はそういった意味では、声のキャラ自体が著しく異なるおかげもあって、チェットの引力圏からは逃れた独自の表現になっているあたりは“男性ボーカリスト”という括りとしてはやはりワールド・クラスにいると思われる人であろう。逆に仮借なくその表現力をはじけさせているのは、この中では異色の(ジャズ・スタンダードとは言い切れない)[08]。パク・チョンヒョンとも共通するところだが、米僑胞系歌手のゴスペル〜ブルース的な領域での屈託のなさ…というのは、またひとつ格別な味わいがある。印象として1コーラスで終わっているような気がしてしまうトラックもあるが(歌謡曲的には3分芸術なのでそれはそれでアリ)、アルバム中この曲の演奏時間が最も長いこともある種、思い入れ度数の傍証となるかもしれない。ちなみに[09]にはミュート・トランペットが入るのだが、クレジットがないため詳細は不明(本人のカズーではないはず)で、この曲とラストはピアノのソロ・スペースも多めにとってある。

 本人の歌唱は折り紙付きではあったものの、世の中にありがちな、“定型フォーマットとしての俳優(女優)のジャズ・アルバム”のような作りを案じてしまっていたが「後から考えると本人のアドリブ・パートほとんどなかったよね」ぐらいでジャズ・チャンネルでかかっていてもおかしくない…というか、ジョン・パク(この人も僑胞だったが…)のビッグ・バンドものがアリと思った方には本作のJKは10曲とも十二分にアリというということでいいと思われる。念のためであるが、改詞などはなくすべてオリジナル英語詞。バックの2人もJKの足を引っ張っているようなことはまったくないので…ということはK-POPチャートには入ってこないのか、このアルバムは!? というのが今回の結論である。


track list
0101
黒いオルフェ



0102
ジェントル・レイン



0103
枯葉



0104
オール・ザ・シングス・ユー・アー



0105
ダニー・ボーイ



0106
ミスティ



0107
マイ・ファニー・バレンタイン



0108
ミスター・ボージャングル



0109
ビウィッチド



0110
降っても晴れても



→ カナ(ハングル読み)を表示




商品コード : S90354C
価格 : 2,000円(税込)
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