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●鷺巣詩郎のスコア&シンセ等による映画『中天』のサントラ。MayBee & フィソンのウタもの企画『中天の記憶』とは別モノ(本来)のOST(ただし『〜記憶』にも鷺巣氏は参加)。『記憶』は韓日中3か国語で歌われていたが、本作はkoto、syomyoといった日本的というべきか、それとも元を辿ればインド・アーリア起源なのか、途中でどうでもよくなってしまうような微妙な音響と、弦楽中心の整然としたオーケストレーション、さらに鷺巣自身によると思われる非平均律的なシンセ等、エスニシティ的な詮索の結果が意味のないほどに多層化された“アレンジ力”で強引に乗り切り、(悪い意味ではなく“メロディー”の記憶が残らないほどに小気味よいという意味での)いかにも歴史的仮想世界に相応しいサウンドに仕上がっている。史実インスパイアの元末明初を舞台とした『MUSA 武士』(2001年)と比較すると、音場的にはラフで聴きやすいといえるかもしれないが、より明快な…というよりは(映画の絵的な部分で、日本人的には“長安の万燈絵”的なものを思い浮かべてしまうであろうことを考えると)あえて過剰にノスタルジックな雰囲気に浸らせない計算された筆法とも思えてくる(ゆえに、別企画のウタものも引き立つという見事な戦略…なのか!?)。まぁ、アジアは1つ…とは到底認められないが、仏教を漢訳によって受容した文化圏の一体性は21世紀の今に至るまで幻想ではない!と思えてくるナゾのOST(映画の出来に関わらず)ともいえるだろう。

●というわけで、声明によるコーラス部分はあるものの、一般的な意味でのボーカル・トラックは本作には収録されておりません。